03.2023.30

台湾発!40 代からの不調に寄り添う「漢方湿布薬」の知恵

日本の皆様、日々の体の痛み、つらいですよね。肩や腰、膝の痛みなど、歳を重ねるごとに増える体の不調は、私たちの生活の質を大きく左右します。西洋医学の治療法ももちろん有効ですが、東洋医学、特に「漢方」の知恵にも目を向けてみませんか?

実は、隣国台湾では古くから、中医学の「骨傷科」(日本の整形外科に相当)が発達し、体に貼る「湿布薬」が進化を遂げてきました。今回は、台湾で長年愛されてきた漢方湿布薬の歴史と、その代表的な種類をご紹介します。専門的でありながらも親しみやすい漢方の世界を、ぜひ感じてください。

台湾漢方湿布薬の歴史と日本人の私たち

台湾の中医学骨傷科の歴史は古く、17 世紀にオランダ統治時代にまで遡ります。当時の日本には、まだ現在の湿布薬のような概念は浸透していませんでしたが、台湾ではすでに、民間療法として骨傷科の治療が行われていました。

その後、17 世紀末から清の時代にかけて多くの漢民族が台湾に移住し、中医学骨傷科は独自の医療体系を築き上げ、様々な外用薬が生まれました。20 世紀に入ると、台湾経済の発展とともに中医学骨傷科の研究も盛んになり、私たち日本人が知る「湿布薬」に近い形のものが、より発展し、受け継がれていったのです。

日本の私たちの身近な不調にも!代表的な台湾漢方湿布薬

台湾で特に注目されてきた漢方湿布薬の中から、代表的な「黒膏(こくこう)」「青草膏(せいそうこう)」「黄膏(おうこう)」をご紹介します。これらの湿布薬は、骨折、捻挫、腫れや痛みなど、私たちが日常で経験しがちな様々な症状に役立ってきました。

黒膏(こくこう):しつこい痛みにアプローチ

黒膏は、その名の通り黒っぽい色の湿布薬です。主な成分は、古くから生薬として知られる「乳香(にゅうこう)」や「没薬(もつやく)」、「僵蚕(きょうさん)」、「防風(ぼうふう)」、「地龍(ちりゅう)」、「蜈蚣(ごこう)」など、多岐にわたります。

これらの生薬は、漢方でいう「活血化瘀(かっけつかお)」(血の滞りを改善する)や「消腫止痛(しょうしゅつしつう)」(腫れを抑え痛みを和らげる)の効能を持つとされています。特に、長引く打撲や関節炎、神経痛など、しつこい痛みに悩む方々に広く用いられてきました。黒膏は、患部の痛みを和らげるだけでなく、血行を促進し、組織の修復を助ける力があると考えられています。

青草膏(せいそうこう):天然由来で優しくケア

青草膏は、台湾の民間療法から生まれた、高い効果を持つ漢方湿布薬です。その主要な成分は、日本でも馴染み深い「薄荷(はっか)」や「藿香(かっこう)」、「艾葉(がいよう)」のほか、「甘草(かんぞう)」や「黄芩(おうごん)」といった生薬です。

これらの成分は、「清熱解毒(せいねつげどく)」(熱を取り毒素を排出する)、「消腫止痛(しょうしゅつしつう)」(腫れを抑え痛みを和らげる)、「活血通絡(かっけつつうらく)」(血行を促進し気の巡りを整える)の作用があるとされています。捻挫や筋肉痛、リウマチ性の関節炎など、急な痛みや腫れに対して優れた効果を発揮すると言われています。天然の草本植物由来の成分が多いため、副作用が少ないとされ、台湾の中医学骨傷科で広く使われています。

黄膏(おうこう):関節の悩みに寄り添う

黄膏もまた、台湾ならではの漢方湿布薬です。主な成分は、「龍胆(りゅうたん)」や「黄柏(おうばく)」、「白芍(びゃくしゃく)」、「川芎(せんきゅう)」、「桂枝(けいし)」などです。

これらの生薬は、「祛風湿(きょふうしつ)」(体内の湿気や冷えを取り除く)、「通経活血(つうけいかっけつ)」(気の巡りを良くし血行を促進する)、「消腫止痛(しょうしゅつしつう)」(腫れを抑え痛みを和らげる)の効能があるとされています。リウマチ性関節炎や腰の筋肉の疲れ、痛風など、関節の悩みに特化して用いられ、痛みの軽減や関節機能の回復に役立ってきました。効果が顕著でありながら安全性も高いため、台湾の中医学骨傷科では高く評価されています。


まとめ:台湾漢方湿布薬の可能性

台湾の中医学骨傷科の湿布薬は、長い歴史の中で育まれ、独自の地域性と優れた治療効果を持つに至りました。今回ご紹介した黒膏、青草膏、黄膏の研究と応用は、台湾の中医学骨傷科の発展に貢献しただけでなく、私たち日本人が抱える日々の体の不調に対しても、新たな選択肢となりうる可能性を秘めています。

今後もこれらの漢方湿布薬が、より多くの皆様の健康と快適な生活をサポートできるよう、研究と応用のさらなる発展が期待されます。

もし、この台湾の漢方湿布薬にご興味をお持ちいただけたなら、ぜひ詳細をお問い合わせください。日本の皆様の健康に貢献できることを願っております。


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